2023/02/14 16:51
Tシャツは私たちにとって最も身近な衣類ではないでしょうか。実際に、1年間に全世界で20億枚ものTシャツが製造されていると言われています。
環境省によると、綿のTシャツ一枚を作るのに2700リットルの水が必要になるそうです。これはお風呂30杯分。飲み水であれば、一人が飲む5年分の水に相当します。
Tシャツになぜそれだけの水が必要なのでしょうか。まず、原料である綿花の栽培に多くの水が使われます。綿花は農作物の中で最も水を必要とする植物と言われています。また、綿の糸や生地を漂白・染色するのにも、大量の水が使われます。ちなみに、ジーンズを作るには7500リットルの水が必要です。このように、ファッション業界は世界で2番目に水を使う産業で、世界全体の排水量の20%を占めているといいます。
水だけではありません。綿花はまた、農作物の中でもっとも殺虫剤を使う植物であり、全世界で使用される殺虫剤の16%、農薬の10%が綿花の栽培に使われているそうです。
また、Tシャツを漂白・染色する際に使われる有害な化学薬品は、排ガスや排水として空気中や川などに排出されることから、農薬散布とあわせて、周辺住民の健康に被害を与え続けています。
最終的に、綿の生地は、バングラデシュ、中国、インド、トルコなどに送られ、極端に低い賃金で人の手によってTシャツに加工されます。そこでは労働搾取や児童労働の問題が発生しています。例えばバングラデシュでは、月給68ドル(約8,840円)という極端に低い賃金でTシャツが縫製されています。
また、ここまですべての工程にエネルギーが使われていることも忘れてはいけません。出来上がったTシャツは、船、列車、トラックで日本などの消費国へ輸送されます。この際に大量の二酸化炭素を排出します。
天然素材の代名詞ともいうべき綿のTシャツでさえ、このように地球環境や途上国の人々に負荷を与えているのです。
かといって、ポリエステルのような石油由来の合成繊維を着ればよいのかというと、そうではありません。合成繊維は二酸化炭素の排出量が綿の3倍。また、日々の洗濯によってマイクロプラスチックが海に流れ出すことから、綿よりも環境負荷がずっと大きいのです。
私はいままで、「合成繊維はプラスチックだから環境に悪いけれど、綿は天然繊維で環境に負荷をかけないから大丈夫」と思いこんで、積極的に綿の服や製品を選んできました。今回、綿のTシャツにこれだけの環境負荷と途上国の人々への影響があることを知り、とてもショックを受けました。
ファッション業界は、石油に次いで世界2位の環境汚染産業です。Tシャツに限らず、どのような衣類も環境に負荷をかけています。この事実を知ったうえで、私たち消費者は衣類とどう向き合い、行動すればよいのでしょうか?
まず私たちにできることは、縁あって手元に来た洋服を使い捨てにせず、大切に長く着ることです。他にも、買うときに商品の作られ方を見ること、消費者として企業に向けて声を上げること、洗濯に気をつかうことなど、我々にできることはたくさんあります。
これらの具体的な方法については、次回の記事で詳しくお話ししたいと思います。